平成13年システム監査 午後1

問3
 認証業務に関する次の記述を読んで,設問1〜3に答えよ。

 A社は,インターネット上で24時間稼働のバーチャルショップを開設し,インテリア小物雑貨や中古家具の販売を行っている。A社は,顧客から注文を受けると注文内容を画面表示し,注文内容を確認した後,請求書と商品を発送する。顧客は,商品受領後,指定期間内にA社指定の銀行預金口座に代金を振り込む。
 A社は,今後,海外インテリア雑貨のオークションも始める予定であり,会員制サービスヘの移行を検討している。これに先立ち,会員がバーチャルショップヘアクセスするときのサーバ認証及び会員認証のために PKI (Public Key Infrastructure:公開かぎ基盤) を導入し,注文も PKI による電子署名(以下,電子署名という)付きにした。
 A社は,自らが CA (Certification Authority:認証局) を構築するのではなく,認証事業者であるZ社のサービスを利用して,有効期間1年の公開かぎ証明書(以下,証明書という)を発行することにした。A社は証明書の発行対象者である会員の審査を行い,Z社では会員用のかぎペアの生成及び証明書の発行に必要なデータの登録,発行業務などの運用を行う。
 

〔Z社の CA システムの概要〕

 Z社の CA システムは,CAサーバ,RA (Registration Authority:登録局)端末,リポジトリ及び HSM (Hardware Security Module:ハードウェア暗号装置)から構成される。HSM は,CA サーバに接続され CA の電子署名用かぎペアを生成,格納する。
 RA 端末は,証明書発行に必要な情報を登録し,CA サーバに証明書の発行要求をする機能及び会員用のかぎペア生成機能をもつ。RA 端末操作者には CA サーバから証明書が発行されており,RA 端末から CA サーバヘの証明書の発行要求には RA 端末操作者の電子署名が付される。RA 端末操作者には,かぎペアの生成,証明書の発行と IC カードヘの格納,証明書の失効及びログ参照の権限が与えられている。
 Z社は,証明書や CRL (Certificate Revocation List:証明書失効リスト)などをリポジトリに格納し,公開している。
 証明書発行依頼を受けた後のZ社内部での処理の流れは,図1のとおりである。

 
 RA端末操作者は,RA 端末から証明書発行に必要なユーザ情報を登録する。
 RA 端末操作者は,RA 端末でユーザのかぎペアを生成する。
 RA 端末操作者は,で生成した公開かぎを CA サーバヘ送り,証明書の発行要求を行う (RA 端末と CA サーバ間の通信の安全性は確保されている)。
 CA サーバは,RA 端末からの要求に応じて会員用の証明書の発行を行い,RA 端末に返信するとともにリポジトリヘ登録する。
 RA 端末操作者は,IC カード発行装置によって IC カードヘアクセスするための PIN (Personal Identification Number)を生成,記録し,で生成されたかぎペアと証明書を IC カードに格納する。
〔会員申請受付から証明書発行,ICカード送付までの認証業務運用フロー〕

 Z社への業務委託を含め,会員申請の受付から審査,証明書の登録発行,IC カード送付までの認証業務の運用フローは,図2のとおりである。また,各業務の内容は,次のとおりである。

 (1)会員申請受付(A社)

 (2)審査,承認及び発行依頼(A社)  (3)発行依頼受付,ユーザ登録,証明書発行及び IC カード発行(Z社)  (4)処理結果報告及び IC カード発送(Z社)



 

 (5)結果受領確認(A社)


〔証明書の失効処理〕

 会員は,IC カードを紛失したり,PIN を忘れてアクセスできなくなった場合など会員の秘密かぎの信頼性が失われたと思われるときには,証明書の失効申請を行う。失効申請は,会員の電子署名付電子メール又は電話でA社の審査担当者あてに行う。
 A社は,電話による失効申請の場合,会員申請時に送付されてきた申請書に記載されている連絡先にコールバックして,失効の意思を確認した後に失効処理を行い,別途書面での失効申請も要求する。A社は,失効申請をA社営業日の営業時間帯(午前 9 時から午後 5 時まで)に受け付け,翌営業日の午前 10 時までにZ社へ処理依頼する。
 Z社は,受領した失効処理依頼を当日中に処理し,毎日午前 0 時に有効期間 24 時間の CRL を発行してリポジトリに登録する。Z社は,CA システムを 24 時間 365 日運用している。
 A社の顧客からの注文は,常にZ社のリポジトリにある CRL を直接参照してチェックされる。
 

設問1
 A社業務部の運用手続には不十分な点がある。必要な手続を二つ挙げ,それぞれ 30 字以内で述べよ。

設問2
 A社は,Z社へ委託している業務運用のセキュリティ要件に関し,Z社に確認あるいは改善要求すべき点がある。二つ挙げ,それぞれ 40 字以内で述べよ。

設問3
 失効処理の運用は,会員が失効すべき事由に気付いた時点から失効情報がリポジトリに公開されるまでにタイムラグがあり,“なりすまし"のリスクがある。

 (1)タイムラグが生ずる原因を三つ挙げ,それぞれ 40 字以内で述べよ。

 (2) (1)で挙げた原因をすべて回避するための改善策を,70 字以内で述べよ。

解答例(TACへリンク)